歯の移植手術(正しくは歯牙移植手術)で大学病院に入院して、無事退院してきました。
入院までの経緯はこちら
今回の入院で怖かったことは2つあって、ひとつは歯の移植手術すること、もうひとつは全身麻酔をすること。
全身麻酔…
全身麻酔…
全身麻酔…
状況がうまく想像できないだけに、不安だけが募る。だって、全身麻酔だよ?汗
麻酔科の先生との術前診断
手術の数日前に、外来で麻酔科の受診が必要になります。麻酔科の受診って、いったい何をするのか意味がつかめなかった私。
「まさか試し打ちじゃないすよね?」
と少しだけビビりながら、待合の椅子で待つ。
麻酔科の受診で具体的にしたことは、私の体質や生活の細かい情報を伝える、同意書を書く、麻酔の手順について説明を受ける、などでした。
喫煙しない、アルコールも普段ほとんど飲まない、服薬してる薬もない、という比較的低リスク患者の私。話し合いはスムーズ。イネ花粉アレルギー持ちのことや、春にマラソンレースでぶっ倒れた話もします。
この失神話については、かなり突っ込んで聞かれたので、細部にわたって説明。なんなら20代のころに倒れた話も。
私の失神話がひと段落した後で、全身麻酔の流れについて説明を受ける。
そこで一番びびったこと。
先生「全身麻酔では、呼吸が止まります。そこで、器官から人工呼吸のための管を通します。今回は歯の手術なので、口ではなく鼻から管を入れます」
と、先生が手に取った管。その直径の太さ。
「息が止まる?で、こ、これを鼻から入れるんですか?」
先生「起きてるときなら絶対に無理ですよ。女性用はもっと細いから大丈夫です」
鼻ってさ、インフルの検査の綿棒グリグリだけで死ねるじゃん。その鼻に、綿棒よりはるかに太い管を突っ込むって、どういうことさ?泣
すっかりビビりモードになった私は、先生に次々と質問をぶつける。おそらく100万回はされているだろう質問を。
「麻酔から覚めないことはないんですか?」「手術中に意識が戻ることはないんですか?」「すごい怖いんですけど」と、しまいには恐怖を訴える始末。
先生「大丈夫です。万が一何かが起こっても必ず対応します。心臓が止まっても大丈夫です。安心してください」
先生がそこまで言うならもう任せよう。何か起こったときには金沢で一番安全な場所にいると思おう。呼吸が止まること、管を入れられることは、初めて知った事実だったけど、おとなしく受け止めるしかなかろう。
手術日の朝
入院して、翌日が手術日。
手術の日は、日付が変わる時点から食べ物はもとより、水分の摂取もNG。
なぜか心は凪。自分でも不思議なくらいの落ち着き。ここまできたらどうあがいても無駄という諦めの境地かね。
私を含め同部屋の3人がこの日に歯の手術を受けることになっていたのですが、私がトップバッター。
ベッドの上でエコノミー症候群防止の白い着圧ソックスをはきます。
余計なものは身につけてはいけません。当然ノーメイク。髪の毛は中学生以来の2つむすび。
手術中は、何かあったときのために、家族が病棟内に待機するよう命じられます。というわけで、8時ごろに夫が病室にイン。8時20分に看護師さんのお迎え。看護師さん、夫、私、の3人で歩いて手術室へ。エレベータを上がって、曲がって、手術フロアへ。
「見送りの方はここまでです」と言われ、ここで「じゃあね!」と敬礼ポーズで元気にバイバイ。手術室の扉が開きます。
手術室への道のり
扉が開くと、中には手術用の帽子をかぶった人たちがスタンバイしてます。
椅子に座って、名前と生年月日を聞かれて、腕のタグをチェック。ここで私も手術用の薄いキャップを着用。髪の毛を全部キャップの中に入れます。
この隣がすぐ手術室なのかと思ってたけど、「では手術室にご案内します」と言われて移動。さすがは大病院、ここから先が結構あるのだよ。
通路を通っていくんだけど、右手には手術室がずらーっと並んでいて、そのいくつかに「手術中」というランプがついている(ネットで調べたら全部で14室の手術室があるんだって)。私が案内されたところも、すでに「手術中」のランプがついてた。
ここでがんの手術を受けた父も、このルートを通ったんだなぁ、と、ふと思う。
さあ、手術室だ、全身麻酔来い!
私が手術を受ける手術室にいざ入室。
壁は青っぽい印象だけど、照明が温かいオレンジ系統。室内が温かくて広い。モニターがどーんとかけてあって、BGMの音楽も流れてる。手術室って寒くて冷たい印象だったから、かなりほっとする。
麻酔科の先生が「本日を麻酔を担当する○○です」と自己紹介してくる。先日外来で受診した男の先生とは違う、女の先生。頼りになる感じなので、全面的に任せます。
手術担当の看護師さんも自己紹介してくれる。若くてとても感じがいい。
「まず上半身全部脱いでください」と言われ、上半身裸に。
(このとき、手術室は女性スタッフオンリー)
すぐにささっと厚い布をかけられて、そのまま手術台へ。踏み台が置いてあるので、自分で登ります。
手術台は狭いんだけど、下の生地がふわふわしてて温かくてそれだけで緊張が少しほぐれる。ビニール系でひんやりしてるかと思いきや、ふわふわあったか。
私「あったかいんですね~、なんかほっとする」
看護師さん「ほんとですか~、よかったです」
左手は点滴用に台の上に置かれて、右手は体の脇できっちり固定される。看護師さんたちのテキパキとした仕事ぶりで、あっというまに、心電図とか血圧計とかいろんなものが体につけられる。
そしていよいよ恐怖の麻酔針。採血と違って針が太いという情報は仕入れていたので、少し心の覚悟。
「麻酔の針を入れますねー、ちょっと痛いですよー、1、2、3、ぶすっ」
うん、痛い。ぶすっと刺さる感じがリアル。
が、1回目はうまく入らなかったらしく、
「もう一回行きますねー、1、2、3、ぶすっ!」これで決まってよかった。
なんか太い針が刺さったという事実だけで、なんか気持ちはふらふら。小心者ですから。倒れそうな気分になる。ま、もうすぐ倒れるからいいんだけどさ。
はぁ~とため息をつきながら、麻酔医さんと看護師さんたちのやりとりを聞く。「あ、徐脈ですね」「マラソンされてるから」、緊張でドキドキどころか、この場で徐脈かい。私、余裕だな。口に酸素マスクが当てられる。でもぴったりくっつきすぎて息ができない。「苦しいっす」と訴えたら、看護師さんが少し離して手で持ってくれてた。
徐脈のせいなのかわからないけど、「少しドキドキする薬を入れますね~」と言われ、確かにその後、心拍数の音のペースが上がるのを確認。
次に、「では麻酔のお薬を入れていきます。ちょっとピリピリしまーす」と言われ、確かに針が刺さっている周辺が軽くピリピリしてきた。
・・・とここで、完全遮断。シャットダウン。電源オフ。
麻酔から覚める
誰かが話している声が聞こえてくる。
「移動しますね~」という声が聞こえて、何人かに囲まれながら、手術室から病室に移動していることがわかる。
主治医の先生の声もわかった。何か話しかけられてるんだけど、理解できても返事できない。軽くうなずくので精一杯。
ものすごく深い眠りについているときに、誰かに話しかけられてる感じ。なにか言われているのは分かるけど、意識が深すぎてうまく反応できないみたいな。
そうこうしているうちに私を乗せた移動ベッドはお部屋に到着。
この時点で、酸素マスク、アイスノン、点滴、パルスオキシメーターなど、いろいろつけられた状態。あれこれ話しかけられた気はするけど、うなずくのがやっと。返事無理。しゃべるの無理。
浅い眠りの中を上がったり下がったりしながら、少しずつ目が開けられるようになりました。
意識が完全に戻る
意識が完全に戻って感じたのが、インフルで寝こんでるときのような体の重さ。
抜歯したせいか、熱があって(37.8)、だるい。
そして何より、管が入ってた鼻と喉が超痛い。喉がいがらっぽくて、咳も出るし、唾液を飲むこむたびに「アウチ!」状態。喉の風邪をひいたときみたいな感じ。
そりゃそうだよね。管が入ってたんだもんね。痛いはずだよ、わかるわかる。
しばらくして看護師さんが来て、酸素マスクが外される。そして、「お茶を飲んでみてください」と。昨晩21時以来の飲み物だ。おいしいー。
↑海の向こうの娘たちに、麻酔からの生還をアピールするための超カラ元気写真。
2本抜いた割には、口もちゃんと開くし、腫れもほとんどナシ。
さらに、その後看護師さんが「先生からプリンかゼリーを食べていいっていう許可が出ましたよ」と伝えてくれて、売店までおつかいで買いに行ってくれた。プッチンプリンおいしいいいいい。
↑いろんなのが体に取り付けられていて、なにがなんだか。
でも、手術室から戻ってきたお昼頃には目を開けることすらやっとだったのに、夕方には点滴引っ張りながら、てくてくと歩いて外来受診に行けるんだから、身体の回復力ってすごい。
微熱は出てたけど、麻酔から覚めた後は一度も鎮痛剤を服用することなく、いたって順調。患部からの出血もまったくなし。
生還できたよー!ばんざーい!
入院ライフ編はこちら
歯牙移植編はこちら