就職氷河期世代女子が「当時の就職戦線」を語ってみる

政府がようやく就職氷河期世代の救済に動き出すそうです。

 

遅いよ・・・・、遅すぎるよ。そりゃ、やらないよりはマシだけど、10年は遅い。

 

当時の就職戦線といったら、自分もまわりも総玉砕と言ってもいいくらい、さんさんたる状況。

地頭のいい一流大卒の男子なら、ロスジェネも氷河期も関係なかったかもしれないけれど、地方出身の凡庸な女子学生の私には北極状態でした。当時の私が経験した就職活動を振り返ります。

私が経験した当時の就活風景

私がアメリカの大学を卒業したのは1995年の5月。帰国してからの就職活動だったので、日本の学生からも、そもそもかなり遅れをとっていました。いうまでもないですが、大学の就職課(?)の助けなどあるはずもなく。

在学中に、ボストンキャリアフォーラム(アメリカで日本人留学生向けに開かれる就職イベント)にも行ったけど、不況の影響で参加企業も少なく、とても内定を取れる状態にありませんでした。

当時の日本はまだインターネットが広まり始めたばかりのころ。就職活動にネットが使われるようになるには、そこから10年近くかかります。

応募するにはハガキくらいしか方法がないのですが、あちこちの企業にハガキを送ってみても、まったく返事もなく、音沙汰もなく。

東京の大手企業はどこもすべてシャッターを下ろしていた記憶があります。特に、女子はあらゆる企業からガチ無視でした。

女子の中でも、一流大か否か、自宅通勤可か否かで、また難易度は違っていたかもしれません。私の場合は、どこの馬の骨か分からない海外大卒で、就職時期もずれ、自宅通勤不可、というあたりで、就職活動カーストというものが仮にあったのならば、最底辺にいたのかもしれないです。

 

30くらいの会社がブースを設けた就活イベント会場に行ってみたこともあります。

出展してる企業といえば、消費者金融、パチンコ屋、地元スーパー、など。ダントツの一番人気は地銀のブース。黒山の人だかりでした。(それも経営統合して今はない)

 

応募の時点で落とされる

どれだけ応募してみても、基本的には書類選考で落とされます。「そもそも女子は採ってないないから」というスタンスです。

氷河期は、男子の採用数も相当絞られたけど、女子は完全に行き場を失ってました。特に地方出身の総合職狙いの女子は、椅子のない椅子取りゲーム状態。

椅子はどこ??椅子ないよー。

筆記テストで落とされる

筆記テストを受けさせてもらえても、すみやかに落とされます。

ある会社では、「弊社の社長の名前を書きなさい」という、愛社精神を確認する設問に答えられず不合格。

ある金融系では、一列に並んだ一桁の数字の隣同士をひたすら足し算するクレぺリン検査っていうのを100人くらいで一緒にさせられて、結果不合格。

「お前は必要ない」と暗に言われる日々です。

面接で落とされる

地方の教育関係の会社に面接まで残ることができ、集団面接を経験したけれど、地方の中小企業に、全国各地からの大学生がずらり。特に女子の大学レベルが高い(男子は中堅)。北大、早大、津田塾。にも関わらず、女子はみんな見事に落とされてました。

私がイロモノ扱いされるのはしょうがないけど、こんなにやる気のある女子たちを、団塊ジュニア世代の熾烈な大学入試を突破してきた優秀な女子たちを、こうも簡単に落とすのか!?

日本企業のバカバカバカ。

 

 友達の話

 エアライン希望の友達

大手航空会社がすべて採用ゼロ。
よって、エアラインへの就職は、どこの大学を出ていようが、どれだけいい成績を収めていようが、知力体力ともに五つ星だろうが、無理でした。

椅子がゼロだと戦いようもないですね。

教員志望の友達

小学校の教員採用試験の倍率が普通に30倍。
教員志望の優秀な友達が「採用試験に受からない」って泣いてました。

30倍って、1つの椅子を30人で奪い合う椅子取りゲームです(しかもあのころはコネが幅を利かせてたんじゃないだろうか)。

時は過ぎて、現在の新潟県の教員採用倍率、なんと1.14倍。
1.14倍って…。誰でもなれるんですか?

あのころの優秀な先生候補を無慈悲に切り捨てて、今になって「教員の能力低下」とか「数が足りない」とか。いったい何を抜かしているのか。

教員志望の3歳下の妹

東京の私立大で教員免許を取って、教員を目指していました。

いくつかの県を受けたけれど決まらず、大学卒業後は洋服屋さんでアルバイト。

その後、教員は無理だけど、保育士なら需要があるとのことで、保育士資格を取り、臨時の保育士などをやっていました。

氷河をかき分けてなんとか就職

私の場合は、なんとか海外大卒を募集していた中小の食品メーカーに拾ってもらうことができました。男子2名と私の計3名の海外大卒が同期。戦友みたいなもので、彼らとは今でも連絡を取ってます。

私たちは、新卒ながら海外出張にも出してもらったりしました。

新入社員として働いていたころ、アメリカの同じ大学で院卒だった友達と電話で話したことがあります。彼もなんとか日本の企業に拾ってもらって、海外業務に携われていました。

彼曰く「俺らはラッキーだったと思うよ」

そう。なんとか就職できて、単純作業ではない仕事につけたのは、たまたま運がよかっただけ。

周りを見る限り就職先が決まらない可能性はいくらでもあった。非正規になる可能性もあった。ブラックな環境で心身を壊してしまう可能性もあった。その結果ひきこもる可能性だってあった。

まったく他人事じゃありません。

今ニュースで取り上げられているひきこもり100万人の一人になっていてもまったく不思議じゃないのです。

そして、「内定4つもらいました」とか言っている昨今の大学生の姿が、まぶしすぎてまぶしすぎて、私らとは違う次元の人種にすら思えるのです。

まとめ

氷河期世代をあまりにも冷遇したツケが、今の日本経済停滞と少子化につながってます。本来なら活躍できただろう人たちがいっぱいいました。本来なら結婚して子どもを産み育てていただろう人たちもいっぱいいました。

本当なら社会の中核を担う年代だったのに、中核どころか非正規やらひきこもりやらにさせられてしまった。信じられないくらいもったいない話です。

あのころの就職活動って、本当に心を病むレベルでした。さんざん「お前はいらない」って否定されてきたんですよ。自分は誰からも必要とされていない、と何度も感じさせられることが、どれだけ鈍い痛みとなって身体に刻まれるか、あれは経験した人じゃないと分からないと思います。

いまさら正社員化って言われても、面接に行くのも怖いんじゃないかと思う。40過ぎて、また否定されたらと思うと、二の足を踏むよね。雇用が流動化されていない日本で、50歳を目前にした中年が「未経験の新入りです!」って組織に入っていくのもキツそうだし。

そもそも政府が企業に氷河期雇用&正社員化の助成金を出して、氷河期が本当に潤うのか?潤うのは企業だけなんじゃないのか?搾取の構図は変わらないんじゃないのか?

それならいっそ、企業ではなく氷河期世代本人に助成金を出してほしいです。

やる気が残ってる氷河期世代向けに、起業を後押しする支援サポートとして助成金や補助金でも出す方がよほどマシなんじゃないかと。

正社員化よりも起業支援。どうですかね?

なんにせよ、自己責任のレベルではなく、完全に政治のミス。本気で救済してほしいです。

この記事を書いた人

yuka

管理人のユカです。
20年前に子育て支援系NPOを作り、10年前に株式会社を作りました。
モットーは「まーなんとかなる」。
とりあえず今までの人生、まぁなんとかなってます。神様ありがとう。
未来のことは分かりませんが、笑って過ごしていたいと思います。